2022.05.30
建築業界動向

「安全性・デザインよりも〇〇」住宅選択の理由 “第一位”【アフターコロナのニューノーマル】とは

住宅取得世帯のニーズも時代とともに変化します。

アフターコロナが意識される最近では「玄関先手洗い設備」「除菌設備」といったニーズは減少し、今後のニューノーマルが注目されています。

国土交通省の調査を見ると、ある住宅設備へのニーズが高まっている事が分かります。

「高気密・高断熱」が注文住宅の選択理由第一位に

国土交通省が発表した令和3年度の「住宅市場動向調査」では、注文住宅取得世帯の設備等に関する選択理由で間取り・広さ・デザイン・水回りの設備を抜いて「高気密・高断熱」が最も多い結果となりました。

出典 | 令和3年度 住宅市場動向調査(国土交通省)

高気密・高断熱の住宅とは

「高気密・高断熱の住宅とは、どういう家の事なのですか?」という質問に対して、一般的な感覚で簡潔に答える場合、次のような説明になるでしょう。

【高気密住宅】

窓枠や床、天井や壁などと外部との隙間が少なく、気密性に優れている家

【高断熱住宅】

外壁と内壁の間に専用素材を用いたり断熱性の高い窓を採用して断熱性能を高めた住宅

計画的な換気には気密性が必要

コロナ禍における生活環境や個人の意識の変化によって、建造物の計画的な換気システムが一般人の間でも日常生活の中のスタンダードとして認知されるようになりました。同様に、住宅の換気システムに対しても深い興味関心を持つ層を増加させたと言えるかもしれません。

「換気の良さ」と「気密性の高さ」は一見矛盾するように思えるため、住宅購入を検討する人の疑問としても「気密性が高いと換気が悪くなるのでは?」「換気の良さを考えるなら、気密性にはこだわらなくても良いのでは?」といった声が多く挙がります。

(pixabay)

実際には計画的な換気をするためには気密性が必要ですが、その事実を意外と知らない人も多いと言います。

「気密性が高い」ということは決して「密閉空間」という事ではありません。

一般的な換気計算では、建物の隙間からの空気の「流入」「流出」を考慮しません。つまり、密閉状態での空気の流れを想定して換気計画を行っているのです。

その結果、建物に隙間があると計画通りの換気が行われずに汚れた空気が室内に停滞してしまうこともあります。

       

気密性が低い家はカビが生えやすい

隙間の多い家では、建物の壁内に水蒸気が含んだ暖かい空気が侵入し、冷たい空気と触れると壁内で「結露」を発生させます。

(pixabay)

結露がカビの原因となるため、せっかくのマイホームがボロボロに傷んでしまうリスクが高まってしまいます。

断熱材や気密シートの使用によって壁に浸透してきた湿気が壁内部の奥まで入らなくなるため、内部結露が起こりにくくなりカビを防止できる点は住宅取得者にとって重要なメリットと言えます。

光熱費が抑えられる

隙間が少なく気密性が高いと家全体が密閉・保温された空間にな冷暖房効率が良くなるため、冷暖房費が削減できます。最近では、あらゆる物価が高騰している中で生活費の増加を懸念している人も多く、生活と切り離せない光熱費を大きく抑えることができるのは、住宅取得者にとって非常な大きなメリットになります。

(pixabay)

ヒートショックを予防し命を守る

急激な寒暖差による血圧変動が心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすのが「ヒートショック」。高気密・高断熱住宅は部屋ごとの温度差が少なくなるため、ヒートショックのリスクを回避できるとされています。

「とは言っても…ヒートショックは、確率としてそうそう起こるものなのか?」と、あまり身近な危険に感じない人も多いかもしれません。

しかし、東京都健康長寿医療センター研究所の調査ではヒートショックに関連した「入浴中急死」が2011年の1年間で交通事故による死亡者数の3倍をはるかに超えたという推計が発表されているのです。

普段から交通事故に気をつけて生活している事を考えれば、ヒートショックは日常生活を送る上で常に対策されるべきリスクだと言えるでしょう。

(pixabay)

防音効果が高い

お子様やペットがいるご家庭はもちろん、現在では在宅・テレワークが一気に広まった事でも住宅の防音性能へのニーズが一層高まっています。

高気密・高断熱の住宅では外からの音を外壁や壁の中の断熱材が吸収してくれるため、静かに過ごしたい人や、在宅ワークで集中したり外部の音を遮断する必要がある人、あるいはご近所との騒音トラブルを心配する人にとって大きなメリットが生まれると言えます。

(pixabay)

季節に関わらず快適に過ごせる

高気密・高断熱住宅は外気の影響を受けにくいため、真夏や真冬の時期にも快適に過ごせる点は最大のメリットの一つと言えます。夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができます。

ヒートショックを防ぐといった健康面へのメリットはもちろんのこと、毎日過ごす場所の快適さに圧倒的な差がつく点は住宅取得者にとって見過ごせないでしょう。

住居では「1日・ひとつの季節の過ごしやすさ」が10年、15年と積み重なっていくため、長く住んでから「この家で良かった」と思えるには、人が快適に過ごせる温度環境が手に入るのは重要な魅力です。

(pixabay)

「ZEH対応」が社会的に求められている

ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略です。高い「断熱」性能をベースに、高効率機器等による「省エネ」、太陽光発電等による「創エネ」を組み合わせてエネルギーの年間消費量をゼロにできる住宅を意味します。

多くの環境問題を抱え、その解決に乗り出している現代において「省エネルギー住宅」は社会的に非常に重要視されており、今後建設するマンションを全てZEH対応にすると発表した企業も出てきているほどです。

住宅と省エネが切り離せない関係になってきている事も、住宅取得者が「高気密・高断熱」を住宅の選択理由とする背景のひとつだと考えられるかもしれません。

(pixabay)

ニューノーマルに欠かせない「高断熱・高気密」

エネルギー消費問題解決の観点からも「高気密・高断熱」はアピールポイントというよりもスタンダードとなり、住宅取得者にとっても必須の検討項目になりつつあると言えるでしょう。

コロナ禍以前から注目されていた「高気密・高断熱」ですが、変化した生活様式の中で換気システムに対する意識が一般的に高まり、いよいよアフターコロナが意識される今、「ニュースタンダードとしての高気密・高断熱」が求められていくと考えられます。