2022.06.20
コラム

コーチングが明らかにした「部下を育てられない人」の共通点。成績優秀な人が優秀なマネージャーになれない理由。

コーチングは1990年ごろからアメリカを中心に広まりました。

2000年ごろからは日本でも経営者やマネージャーの研修に用いられるようになり、ビジネス分野における人材開発の手法として非常に有名になりました。

コーチングに基づいて分析していくと、部下を上手く育てられないマネジャーには共通点があると言います。

名コーチになれる名選手と、なれない名選手の違い

成績優秀な人物を指導者に抜擢しようと考えるのは自然な事でしょう。成功を収められる思考・行動・ノウハウ等を他のメンバーに伝えてもらえれば、チームがより強くなると想像するからかもしれません。

しかし、優秀な成績を収める名選手だから、良い選手を育てられる名コーチになるとは限りません。

反対に、いわゆる「コーチングのプロ」と呼ばれるような教える事に長けている人物は、現場で華やかな成績を収めてきたプレーヤーでない事が多々あります。どうしてなのでしょうか。

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指導とコミュニケーションは一体である

コーチングの視点から分析した結果、良い指導者になる名選手とそうでない名選手との間にある大きな違いは「相手の話を聞くかどうか」なのだと言います。

例えば伝統技術の継承といった特殊な環境ならば、黙って師の背中を見つめ、技術に関しては指導を受けるのでは無く見て盗む、という場合もあるでしょう。

しかし、一般的な企業や組織では指導をする側と受ける側が存在し、両者間には必ずコミュニケーションが存在します。つまり、コミュニケーションスキルが指導力そのものであると言っても過言ではありません。

とは言え、「相手の話を聞く」たったそれだけのシンプルな事が、良い指導者になれるかどうかにそこまで大きく影響するのでしょうか。

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傾聴力が相手の「行動」を引き出す

「傾聴(けいちょう)」という言葉を聞いた事があるでしょうか。

米国の心理学者カール・ロジャーズが提唱した「積極的傾聴、Active Listening(アクティブリスニング)」の事ですが、カウンセリングやコーチングの他、コミュニケーションに関するセミナー等でも取り扱われています。

傾聴は上司と部下間に限らず、顧客とのコミュニケーションから家族に至るまで、あらゆる人間関係で効果を発揮すると言われています。

傾聴(アクティブリスニング)では、「人は生まれながらにして、建設的な方向に向かおうとする傾向がある」と考えます。アドバイスや指摘、評価はせずに相手の話に耳を傾けます

相手の気持ちや思考の整理をサポートすると、相手から自発的な問題解決能力を引き出せると言うのです。

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傾聴が実施されるかどうかを部下と指導者に当てはめて簡単に表してみると、次のような理解になると言えます。

・傾聴…任せるべきところを任せる。部下の成長を待ちながら、共に歩みを進める上司。

・非傾聴…部下に対する不安や懸念が強く、指摘やアドバイスを主とした指導を行う上司。

相手の話を積極的に聞いて受け止める機会が、相手自身の問題解決能力を育てます

反対に、指摘や評価・アドバイスが優先されるコミュニケーションは相手の問題解決能力を低下させるだけではなく、「信頼されていない」「自分の考えよりも相手の考えの方が重要なのだ」という無言のメッセージを相手に与えると言います。

その結果、相手の自己信頼感をも低下させてしまうのです。

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名コーチとは自己の成功体験や手法をノウハウ的に相手に伝える事を目標にするのではなく、メンバーそれぞれの考えを引き出し受け止めながら、相手が本来持っている解決力・成長力を育てることができる人物なのです。

「指摘・評価」の代わりに「会話の拡大」をしているか?

ただ話を聞いて受け止めるだけでは、指導にはなりません。それでは、伝えるべき事を伝える時に名コーチはどのようなコミュニケーションを取るのでしょうか。

会話の拡大で相手を導く

もしも、部下がまともにリサーチもせずに根拠の無いプランを提示してきたら。あまりにも夢物語が過ぎている、現実味の無い理想アイディアを持ってきたら。どのような言葉をかけるでしょうか?

「せめて、根拠になるだけのリサーチをしてから提案してくれよ。」「それは非現実的だよね?」こんな言葉を発したくなるかもしれません。

しかし、自分の意見やアイディアに対して指摘や評価のみを返された時、人は自分で積極的に考える事をやめていってしまうのだと言います。

「この部分について、詳しく聞けますか?」「実現にあたってハードルがあるとしたら、どのような事が考えられますか?」

ほんの些細な違いのように思えますが、名コーチと言われる人物はこんな場面ですら相手を主役にしながら会話を広げて、相手の成長を諦めずに寄り添いながら忍耐強く導いていくのです。

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優秀な指導者は会話のスペシャリストだった

華やかな経歴、突出した才能、圧倒的な成績…よりも、優秀な指導者に必要なのは「会話力」であると言えるでしょう。

成功に行き着く道筋は、人の数だけ存在します。冷静に考えれば、優秀な人物の成功ルートが100%他人にそのまま当てはまる場合の方が少ないでしょう。

「積極的に伝える」のではなく「積極的に聞く」。部下を育てられる優秀なマネージャーになれるのは、部下の話を聞いて受け止める重要性を理解し、その時間や場所を作り出せる人物だと言えるのではないでしょうか。