日本の3Dプリンター住宅、実用化はいつ?
「3Dプリンター住宅」は、コストや工期の面で従来の建築、住宅購入の常識を覆すと言われています。
これまで当たり前だった35年の住宅ローンから人々を開放する、といったメリットも大きな注目を集めている理由のひとつです。
しかし、日本で3Dプリンター住宅を実用化させるにあたっては、国内の建築基準法や基礎工事の条件の面などで課題も多いのが実情です。
そこで、この記事では日本国内での3Dプリンター住宅の、今後の実用化に関して詳しく解説します。
目次
セレンディクスが、AGCセラミックスとの協業を発表
日本の3Dプリンター住宅について調べると必ずといっていいほど挙がる名前のひとつが、「セレンディクス株式会社(兵庫県西宮市、以下セレンディクス)」です。
セレンディクスは、3Dプリンターによって作られる球体住宅を22年度に販売しました。そして、6棟が完売しています。
2023年2月1日、セレンディクスはAGCセラミックスとの協議を発表しました。
3Dプリンタ住宅の耐火性、耐水性、断熱性と仕上がりの美しさを実現するための開発に取り組むとしています。
既に日本で実用可能な3Dプリンターの家、「球体住宅」とは?
日本では3Dプリンター住宅の実用化が難しいのではないか、と言われる最も大きな理由は、国内の建築基準法や基礎工事の条件面です。
しかし、22年度にセレンディクスが販売した「球体住宅」は、床面積10平方メートルのサイズです。
この場合には、一定の条件を満たすことで建築確認申請が不要となるため、実用化できるのです。
この球体住宅は、24時間で施工可能、日本での販売価格が330万円です。
床面積のコンパクトさを考慮しても、この工期と価格は衝撃的で、3Dプリンター住宅のさらなる実用化について人々の注目を集める結果となりました。
球体住宅の用途は「グランピング」や「趣味の空間」
球体住宅の場合、日本での実用化が可能ではあっても、床面積が10平方メートルサイズのため一般的な住居として使用することは現実的ではありません。
そのため、球体住宅はグランピングや趣味の空間、店舗といった用途が想定されています。
「人が住むための3Dプリンター建築」の今後
セレンディクスがAGCセラミックスとの協議を発表した事が非常に話題になっていますが、「セラミック造形材」による3Dプリンター住宅開発が注目されています。
AGCセラミックス社の3Dプリンター用の造形材は「BRIGHTORB(ブライトーブ)」と呼ばれるものです。
「ブライトーブ」の特徴は、セラミックスの弱点である加工のしにくさや、焼成時の収縮による歪みやすさを解消している点です。
切削加工なしに複雑形状が可能なため、高い寸法精度と自由な大型形状を実現できることが期待されています。
セレンディクスは今後、日本の建築基準法をクリアした上で、広さも確保し、強度や耐火性、断熱性を担保した3Dプリンター住宅を、現在の通常の住宅価格のおよそ10分の1の、500万円程度で販売することを目指しています。
(pixabay)
建設用3Dプリンター企業Polyuseが7.1億円を調達
建設用3Dプリンタメーカーである株式会社Polyuseが、7.1億円の第三者割当増資を実施した事も大きな話題を呼んでいます。
Polyuseは資金調達の背景として、建設業界の高齢化に伴う人材不足や、全国社会インフラの老朽化等の問題解決への対応があるとしています。
今後は調達した資金をもとに、3Dプリンタの精度・品質の向上、印刷方法のさらなる可能性を目的として研究開発を進めるとしています。
まとめ
日本国内においても、3Dプリンターによる球体住宅が完売する等、その動きは広まっています。
国内で3Dプリンター住宅を販売するセレンディクスはAGCセラミックスとの協業を発表し、今後は耐火性、耐水性、断熱性と仕上がりの美しさを実現する、さらに発展した3Dプリンター住宅の開発を進めるとしています。
また、国内の建設用3DプリンタメーカーであるPolyuseは7.1億円の第三者割当増資を実施し、3Dプリンタの精度や品質、印刷技術の更なる研究開発を進めるとしています。
【参考サイト】
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2302/20/news003.html