2022.05.19
建築業界動向

「工務店生き残り戦略」エクステリア市場への新規参入の可能性とは?

2022年、長引くウッドショックや、住宅資材の高騰など住宅業界にとっては非常に厳しい年になっています。
すでに工務店のM&Aも活発になっているのが現状です。
そんな厳しい状況の中、生き残るためには、どうすればいいのでしょうか。

本記事では、工務店がエクステリア事業を手がけることで得られるメリットや、エクステリア市場の可能性について解説します。

関連記事:【建設業界・住宅業界必見】M&Aのメリットと動向

「エクステリア」と「外構」の違い

「エクステリア」と「外構」は似ていますが、少し違います。
「外構」が外側の構造物を指す言葉になります。つまり、玄関までのアプローチや塀、車庫などです。
それに比べて「エクステリア」は外構部の「空間」を意味します。
統一感を演出したりデザイン性を高めることで、顧客にとって理想の住まいを提供することができます。

また、見た目の美しさだけではありません。
戸建ての場合は、空き巣被害に遭わないように、フェンスの高さを調整することや、照明の設置など、防犯上でも重要な役目を担っています。

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エクステリア市場の拡大

日本エクステリア工業界が発表した、2021年度(2021年4月〜2022年3月)のエクステリア製品の出荷統計は2430億7540万円で、前年比102%に着地しています。

5年前の2016年度(2016年4月〜2017年3月)が2308億1760万円と比較すると市場の拡大していることが明らかです。

参考資料:一般社団法人 エクステリア工業界 製品別出荷統計表

今後もエクステリア市場はさらに拡大することが見込まれています。市場拡大の要因を大きく分けて2つご紹介します。

コロナウイルスの影響

エクステリアが注目されるきっかけになったのが、コロナの影響によって自宅にいる時間が長くなったことが大きな理由です。「おうち時間を楽しみたい」という声が多く、外出できない分、庭を充実させたりという動きが多くなりました。

エクステリア商品の中でも、テラス囲い・ガーデンルーム、カーポート、屋外照明などがコロナ以降は売上が伸びているようです。

宅配ボックスの普及

エクステリア市場の拡大の後押しになっているのが、「宅配ボックス」の普及です。
宅配ボックスは、外壁に埋め込むタイプやポストと一体型になっているタイプなど様々な選択肢があります。
そのため、宅配ボックスの設置を提案することで、庭やフェンスなどトータルコーディネートの提案につなげることができます。

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エクステリア事業を内製化するメリット

エクステリア事業を内製化させることで、得られるメリットは複数あります。

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他社との差別化・高付加価値な提案営業ができる

大手ハウスメーカーのような「ブランド力」や「知名度」がない工務店にとって、何で差別化を図るか?は重要な課題です。「耐震性能」や「地元特有の気候に合わせた施工技術」などこだわりは様々かもしれませんが、それももう当たり前の時代です。

その点、建物、エクステリア両方に強い工務店というのは、まだまだ多くありません。
トータルでプロデュースすることで、住まい全体に一体感を持たすこともでき、顧客への提案の幅も広がります。

品質の確保と利益率アップ

エクステリアの施工は下請けに丸投げし、中間マージンを取る形が非常に多いです。
自社施工の強みとして、顧客のイメージを汲み取りやすく、品質を保ったまま費用も抑えることが可能です。建物とエクステリアの調和も取れるため、より建物が引き立つデザイン・空間を提案し、顧客満足にもつながるでしょう。

リフォーム受注アップ

建物の老朽化とともに、エクステリアもリフォームが必要となります。
エクステリアは、『家の顔』と表現されるほど、第一印象を決める重要な部分です。
通りから目に付くため、リフォームを検討する方が多く、エクステリアのリフォームとともに外壁など、傷んでいるところをまとめて提案することで受注金額のアップにつながります。

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住宅ローンに組み込むことができる

エクステリア・外構工事費用は基本的に住宅ローンに組み込むことができません。
しかし、自社で内製化し、建物の予算を引き上げることで、実質エクステリア費用を住宅ローンに組み込み提案することができます。
そうすることで、エクステリアの市場規模がさらに拡大する可能性があります。

成功事例

エクステリアを内製化し、受注率や売上アップにつながった成功事例をご紹介します。

女性プランナー

エクステリア部門に女性プランナーを多数配置させ、受注率をアップさせている会社があります。
女性ならではの細やかな目線で、実用性や機能性がある生活しやすくセンスの良いエクステリアを提案し、顧客の心を掴んでいるようです。

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M&A

エクステリア事業への参入を検討しても、「自社にエクステリアのプランを描ける社員がいない」「職人の確保はどうしよう」という問題が残ります。そのような課題をM&Aで解決した会社の事例です。
譲渡企業のエクステリア工事業のオーナーは、後継者がいないため、従業員の雇用を守りM&Aによる経営統合を希望していました。
譲受企業の注文・分譲住宅をメイン事業にしている工務店は、自社でカバーできていなかったエクステリアの内製化を進めることができ、お互いにとって、相乗効果のある経営統合に成功しました。

まとめ

本記事ではエクステリア市場へ参入するメリットについて解説しました。市場は今後も拡大傾向にあり、売上向上だけではなく、他社との差別化を図る意味でも、検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。

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