【リーダーシップ】AI分析で判明、上位5%リーダー”伝えない”スキル
トップ5%の上位リーダーの習慣をAI分析した書籍「AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣(著:越川慎司)」が話題です。
膨大なデータを分析して見つかった非常に興味深い共通習慣が様々取り上げられていますが、その中の「あるコミュニケーションスキルの共通点」に、人間心理の法則と密接に関係した特徴が見られました。
リーダーシップのスキルが必要な人にとって、ひとつの回答となるかもしれません。
目次
「伝える」と「伝わる」の違い
一流のリーダーは「伝える」のではなく「伝わる」コミュニケーションをすると言います。
「話上手は聞き上手」とよく言われますが、「伝える」ことに集中した時、人は一方的になりがちです。伝えようとするあまりに話すぎてしまったり、相手が分かっているかどうか不安になって何度も繰り返して話してしまったりします。
心理学的視点を加えて分析結果を見てみると、この結果には多くの人に共通するいわば「人間の性質」が関係していると考えられます。
非言語コミュニケーション
非言語コミュニケーションは、言葉以外の手段によるコミュニケーションのことです。
非言語コミュニケーション研究者のレイ・L・バードウィステル(英語版)は、二者間の対話の際に言葉による伝達は全体の25%ほどであると結論づけました。
残りの65%を占めるのはジェスチャーや表情といった仕草・態度や、相手との間の取り方です。
これはつまり、例え言葉がどれだけ適切であっても最終的に相手に伝わる言葉の意味は非言語コミュニケーションに依存する部分が大半だという事です。
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身近で分かりやすい例のひとつとして、「ごめんね」と相手に伝える場面を想像してみましょう。真剣な表情で言うのか、笑いながらなのか、姿勢が正されているのか、あぐらをかいているのか…。
深く考えずとも、私たちは日常の中で非言語コミュニケーションの重要性を肌で感じていると言えるでしょう。
問いかけや相槌でも非言語コミュニケーションが重要
「伝わるコミュニケーション」についても、言語と非言語の両面から考える必要があると言えます。
例えば、必ず質問の時間を確保してメンバーに発言の機会を与える習慣を持つのも良いと言えるでしょう。
そして重要なのは「質問はありますか?」と声をかける時には姿勢を正して明るい表情で問いかける、「なるほど」と相槌を打つ時には相手の目をみて穏やかに大きくうなずくなど、一つ一つの非言語コミュニケーションです。この意識をどれだけ徹底できているかが上位5%のリーダーと95%のリーダーの大きな差の一つなのかもしれません。
また、相槌のバリエーションを豊富にしたり、リアクションを工夫するのも「自分から相手に伝える」以上に「相手からしっかり丁寧に受け取る」ことを大切にした「伝わる」コミュニケーションだと言えるでしょう。
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ジョハリの窓
ジョハリの窓は1966年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが共同で発案した性格構造論です。
人間同士の交流において、自己のあり方が他者の成長に与える影響を示しています。
ジョハリの窓には4つの領域があり、そのうち「開放」の領域を広げると人間交流が健全化され、信頼関係が築かれやすくなったり互いの成長が促進されると考えられています。
チームにおいて、リーダーが率先して人としての自己開示をする事にはプラスの効果があるでしょう。「リーダーの方から腹を割って話してくれている」「信頼関係を築こうとしてくれている」と感じて、メンバーからも自己開示をしやすくなり、対話がスムーズになる効果が予想されます。
信頼関係が強化され安心感が生まれれば、お互いにとって居心地の良いチームに近づく事が出来るでしょう。
アクティブリスニング
アクティブリスニングは1963年にアメリカの臨床心理学者のトマス・ゴードンが始めた親教育プログラムの中のひとつです。
アクティブリスニングをすると、話し手はのびのびと率直に話せるようになり、内面的な良い変化も起こりやすくなると言われています。
4つの第一次欲求
人が「話を聞いて欲しい」と思うのは、多くの場合に何か悩んでいたり疑問や問題を抱えている時です。特に仕事の中でメンバーがリーダーに話を聞いて欲しいと思う場面なら、ほとんどの場合は問題を抱えている時ではないでしょうか。
人は悩みや問題を抱えている時、4つの第一次欲求を持つと考えられています。
- 4つの第一次欲求
- 気持ちを分かって欲しい
- 考えを理解して欲しい
- 自分を思いやってほしい
- 優しい態度で接してほしい
この4つの第一次欲求が満たされると、人は心が安定して自ら問題解決をしていけるようになると考えられています。反対に、第一次欲求を満たさないコミュニケーションを取ると、問題を抱えた人自身が解決していく力を阻むことになると言います。
4つの第一次欲求を満たすコミュニケーションとは、「本人の問題解決能力を信じて引き出す」コミュニケーションと言えるでしょう。
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良かれと思ってしてしまう指示・アドバイス
例えば、問題解決を急ぐあまりに相手の話をさらっと聞いて命令や指示をすぐに出したり、賞賛や同意、あるいは批判といった「自分の意見」を向けることはアクティブリスニングにおいては適切ではありません。
ついつい良かれと思って、解決方法の提案・アドバイスとして自分の考えを伝え始めてしまう事はリーダーに限らず日常のあらゆるコミュニケーションでよく起こると言われています。しかしそれでは、相手にとっては理解してもらうどころか、理解させられる時間になってしまうのです。
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「分かってほしい」「理解してほしい」は、あくまで第一次欲求なので満たされれば次のステップに進みます。提案やアドバイスも視野にいれての対話を進めるのは第一次欲求が満たされた後が良いでしょう。
メンバーが話し始めた時には、まず相手の4つの第一次欲求を満たせる態度を心がけて、まずともかく話を最後まで丁寧に(言語プラス非言語コミュニケーションで)聞くことを第一にします。
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「相手の話は最後まで聞きましょう」とはよく言うものの、実際にはリーダーとメンバーなどそれぞれに立場があったり、問題を抱えた相手の話を聞く際には、この第一ステップを飛ばしてしまう事で本人の問題解決力がなかなか伸びなかったり、人間関係が良く無い方向に行ってしまうケースが実は非常に多いと言われています。
チームメンバーを生き生きとさせるリーダー
AIによるリーダーシップの分析結果を心理学的視点で見てみると、チームメンバーを生き生きとさせる一流リーダーのコミュニケーション方法とその根拠が、具体的に見えてきました。
チームの強化には個人の向上が必須ですが、上位5%のリーダーは心理学の知識の有無に関わらず、人間心理にかなったコミュニケーションを取り、個人の成長を促進させていると考えられます。
態度や姿勢、最後まで丁寧に話を聞く、話を邪魔しないといった事は当たり前のようで、徹底するのは意外と難しいのかもしれません。
才能や恵まれた境遇といった事ではなく、上位5%のトップリーダーの能力とは、ひとつひとつのコミュニケーションを学び、徹底・継続できる努力に他ならないのかもしれません。