2022.03.11
建築業界動向

〈建設業界向け〉もう職人不足で悩まない!

日本企業において、切り離せない課題が人手不足。
働き方改革など国が施策を次々と打ち出していますが、改善するにはまだまだ時間がかかりそうです。
そんな中、2025年には90万人の人材不足が懸念されると言われている、建設業界の現状や、人手不足問題を解決するためのポイントをご紹介します。

1.就業者数の現状

総務省の労働力調査のデータによると、2021年2月時点の建設業就業者数は488万人、
(前年同月比では97%)と15万人の減少となっている。
一番、就業者数がピークだった1997年から197万人減少している。

また、就業者のうち約36%近くが55歳以上で、今後10年以内に多くの就業者が引退
することで、より職人不足が加速することが容易に想像できます。

出典)日刊建設工業新聞

厚生労働省の調査によると、2021年2月時点での職業別の有効求人倍率のランキングは以下の通りです。
建設躯体工事(9.21倍)
土木(6.42倍)
保安(6.42倍)
建築・土木・測量技術者(6.35倍)
採掘(4.66倍)
このランキングから、建設業界では深刻な人材不足だということが一目でわかります。

2.新設住宅着工戸数と大工の減少の深刻化

野村総研のレポートによると、新設住宅着工戸数は、2017年度の95万戸から、2030年度には60万戸への減少が予想されています。
また、新築需要の落ち込み以上に深刻なのが、大工の減少です。
2015年時点では35万人だった大工の数は、2030年には大工の人数は21万人まで減少する見込みです。

大工の減少によって工務店は・・・
・大工一人あたりの生産性を1.4倍まで引き上げないと供給が追いつかなくなる。
・営業が受注しても、現場が動かなくなることで売り上げの減少。
・外注費の上昇が見込まれ、大工を外注している工務店が市場を退場する恐れがある。

3.そもそも職人不足に陥る原因とは?

3-1.採用に苦戦

「3K」のイメージが定着しているため、若者が進路として選択しない。
若者に建設業界のイメージを聞いてみたところ、以下のような回答がありました。
・作業着で汚れ仕事・残業が多そう
・年功序列の色が強く、自分の意見が通りにくそう
・体育会系の社風で飲み会が多そう
・若い人がいないイメージ(同世代と働きたい)
・極めるのに時間がかかる
・時代がITが伸びているという背景があり、そもそも建築業界に目が向けられない
特に最近の若者は、収入>ワークライフバランスという人材が増えており、
少子高齢化も後押しし、ますます若手が採用しにくくなっています。

3-2.離職率が高い

長時間労働や、年間休日の少なさ。
図のように、建設業界は他の産業に比べて、年間340時間近く働いていることになります。


出典)TETSU MAG

また、転職のハードルが昔よりも著しく低下していることが一つの原因と考えられます。
人手不足による売り手市場に拍車をかけるように、求人媒体の普及。
CMの露出だけでなく、スマホで情報を取得できるようになり尚更加速しています。
仕事が辛いと思った時にすぐ、転職が脳裏をよぎるのかもしれません・・・。

4.採用に成功している企業はどうしてる?

4-1.技術者の評価制度の見直し

(pixabay)

ある企業では、設計の社員の離職理由に「営業は数字を持っている分、明確な評価制度があり、給与や昇格にも反映されやすい。設計職は評価されにくいため昇給スピードが遅い」という意見がありました。

そこで設計職にもインセンティブ制度を取り入れ、基本設計・実施設計・確認申請業務など図面や各フェーズごとで評価をしています。
インセンティブをフェーズごとで付与する理由としては、2点あり
①それぞれの工程に責任感を持って仕事をしてほしいという思い。
②インセンティブが入る時期をずらすことにより、月々の給与が安定する。
また、住宅の難易度によっても評価を変えているとのことです。

4-2.キャリアチェンジしやすい環境に

また、ある企業では営業〜設計まで一人で担当させることで、若手の人材の採用に成功しています。理由としてあげられるのが、担当ポジションを細分化しないことで、個人的な成長の機会を持つことができ、やりがいを持って働く環境を整えています。
ただ、業務量が増えることで負担が増えるというデメリットも・・・

4-3.待遇の改善と生産性の向上

長時間労働の改善や休日日数の確保。労働条件の見直しを行うことが必要となってきます。
また法改正に伴い、建設業界では2024年4月からは本格的に労働時間の上限規制がかかります。
上限を超えた場合には罰則があるため、今のうちから勤怠管理システムを導入し、
従業員の労働時間を正確に記録し把握しておく必要があります。

他にも、採用がなかなかうまくいかず少人数での工事が常態化することも珍しくありません。そうなると一人ひとりの負担が大きくなり労働時間も必然的に伸びてしまいます。
ICT技術の導入をすることで、アナログ作業によって発生する労力や時間が削減されます。「きつい、危険、きたない」 から 「給与、休暇、希望」 へと建設業界全体のイメージ向上にもつながることになるでしょう。

5.まとめ

今回は、建設業界の人手不足について取り上げました。
建設業界では他の産業に比べて、非常に深刻な問題であるということが言えます。
採用において大手企業でも苦戦する中、中小企業が成功するためには待遇の良さや働きやすい環境を整えることが近道となるでしょう。