東京の住宅価格が上昇?太陽光発電の設置義務化における、住宅メーカー側の課題とは?
5月24日に都環境審議会が太陽光パネルの設置義務を求める中間答申がとりまとめられ、ニュースで取り上げられました。
政府が2021年8月に、「太陽光発電の設置の義務化について検討する方針である」ということを発表してから様々な意見が飛び交う中、今回条例が成立すれば全国初となります。
本記事では、設置義務化における背景と課題や、住宅業界にとってどのような影響があるのかについて解説します。
目次
設置義務化条例の詳細
2021年6月時点では、公共建築物に対しての設置は原則義務化としていましたが、新築住宅に対しての設置の義務化は見送っていました。
条件に当てはまる住宅に対して、「新築を建てる際に、必ず太陽光発電を設置しなければいけない」という内容です。
義務化の対象は、施主側ではなく、住宅を提供するハウスメーカーや工務店にあたる施工側となります。また年間に都内で2万平方メートル以上を供給する事業所という条件があり、この2万平方メートルには大規模なマンション等は含まれません。
都内には、上記の条件に当てはまる事業者は約50社と見込まれております。
都内の新築住宅の2万3000戸程度が対象となり、これは都内全体の新築住宅のおよそ半数を超える数になります。
太陽光発電の導入を義務化する背景
そもそもなぜ政府は、太陽光発電の設置義務化を進めているのでしょうか?大きく分けて、二つの理由が挙げられます。
温室効果ガス46%削減
地球温暖化が問題視される中、日本は温室効果ガスの排出量を、2030度は46%削減(2013年度比)することを菅政権が目標として定めました。
日本では、温室効果ガスが発生する割合の多くが発電時であるという特徴があるため、エネルギー分野での削減が注目されています。
脱炭素化社会の実現
政府は、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目標としている「ゼロエミッション東京」の実現を掲げています。
太陽光発電導入件数の現状
日本で太陽光発電が住宅に導入されるようになったのは1993年からです。
2009年に電力の買取制度が始まり、同時期に国が補助金制度を設けたことから、普及率が急激に伸びました。
また、2011年の東日本大震災で発生した原発事故をきっかけに、原発にかわるエネルギーとして太陽光発電に注目が集まったことも導入を加速させた理由の一つです。
そこから2019年度にかけて、全戸建て住宅の約9%となる267万6116戸(累計)に設置されていることが下記のデータから分かります。
2021年時点での設置率は15%程度まで伸びているようです。
課題
太陽光発電の設置義務化は、住宅を提供するハウスメーカーや工務店にも解決すべき課題が複数あります。
建築コストの増加
戸建住宅に設置する太陽光パネルの平均金額は100万円〜130万円です。
もちろん、設置するパネルの枚数や、メーカーによって金額は異なりますが、もともとウッドショックなどで住宅価格が上昇している状況で、太陽光パネルの価格が上乗せになれば、住宅購入のハードルが上がることは間違いありません。
太陽光パネルの費用を住宅メーカーが負担し、受注を後押しするなど一時的に凌ぐことはできても、利益率の低下は避けることができないでしょう。
遅かれ早かれ、購入者が負担しなければいけなくなり、住宅の購入を見送る人が増加する可能性は高くなるでしょう。
責任問題
太陽光パネルを設置したからといって、設置費用を必ず回収できるかは分かりません。
東京は高層ビルやマンションも多く、設置後に高層マンションが建設され日当たりが悪くなった場合、予測していた発電量を下回るケースも出てくるでしょう。
そして、太陽光パネルは初期費用だけでなく、メンテナンスが必要なため、ランニングコストもかかります。一回のメンテナンスで5万円〜10万円程度かかり、予想に反して、発電量<コストとなった場合の責任は誰が取るのか?という問題が発生するかもしれません。
まとめ
太陽光発電設置の義務化において、住宅メーカー側、消費者側ともにデメリットとなってしまう可能性があります。また、世界的に半導体不足が解消していない状況で、太陽光パネルの生産が追いつくのか?という問題も残ります。
今回の条例改正は年度内の成立となる動きです。太陽光発電設置の義務化されれば、住宅業界全体に影響を及ぼすことになるでしょう。