2021.10.10
建築業界動向

【住宅業界】中小工務店が抱える深刻な「後継者不足」解決策3選!

経常利益が黒字でも後継者がいないことにより、廃業を余儀なくされている
中小工務店が増えています。
そんな状況を打破するために、いまできることは何なのかをお伝えします。

(pixabay)

1.後継者不足の現状

東京商工リサーチの調べによると、2020年上半期(1~6月)の「人材不足」による倒産は、前年の2019年(190件)を上回る253件(前年同期比33.1%増)となっており、
過去最多となっています。

また、帝国データバンクの調査報告からは、全業界26.6万社の内、17万社が後継者不在であると発表されています。
建設業は不在率が70.5%と、全業界の平均65%を上回り深刻な状態であると言えます。

2.原因

なぜ、後継者不足に陥っているのでしょうか?大きく分けて、考えられる原因が3つあります。

2-1 経営者の高齢化

中小企業の経営者の年齢は、1995年から2015年の20年間で平均47才から66才まで
引き上がっている。
2025年には70才を超える経営者が245万人にのぼり、ますます高齢化による、後継者不足の問題は深刻化する可能性が高まっています。

出典:中小企業庁「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」(平成29年7月)より抜粋

2-2 業界全体の人手不足

建設業界は、2025年には90万人の人材不足が懸念されると言われています。
就業者数がピークだった1997年から197万人減少しており、採用の難しさや、
離職率の高さから、事業承継できる人材の確保が難しくなっております。

2-3 少子化

もともと中小企業の後継ぎは、70%近くが親族間の事業承継で成り立っていました。
少子化に伴って、子どもへの事業承継が難しくなるとともに、情報化社会で「なりたい職業」
の選択肢が増えたことにより、家業を継ぎたくないという子どもが増えたことも
後継者不足の原因となっています。

出典:中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査
(2016年11月、(株)東京商工リサーチ)
出典:事業構想projectdesignonline

3.後継者に求められるスキルとは?

後継者を選出する際に、どのようなスキルを持っていればいいのでしょうか?
ここでは、後継者にふさわしいかどうか、どういったポイントに注目すればいいかについて解説します。

3-1 経営能力

どんな後継者を求めているか?の問いに対して、圧倒的に多い回答が「経営能力の高さ」です。
また経営能力だけでなく、経営意欲に関しても重視する傾向にあります。
経営能力に関しては、育成可能なスキルであると言えます。
早い段階から、社長の近くで業務させることがおすすめです。

3-2 関係構築力

跡を継いだ時に苦労することとしてよくあるのが、従業員やクライアントとの関係性の維持や構築です。
工務店となると、ベテランの職人さんがいたり受け入れてもらうまでに時間がかかることも少なくありません。

3-3 リーダーシップ

経営者として、組織を任せると考えた時に、非常に重要なのが「人間性」です。
組織を率いるリーダーシップがあるか、決断力があるかどうか。
これらは中々育成によって身に付くスキルではないので、後継者選びの際に、しっかりと見極めが必要となってくるでしょう。

4.解決策

後継者不足の解決方法を3つご紹介いたします。

(pixabay)

4-1 事業承継

親族、従業員、社外からの承継者を迎えるパターンがあります。
工務店経営者の約3割は「自分の子ども」に承継を希望しています。
親族への事業承継は、会社の経営権を他人に渡さなくて良いという大きなメリットがあります。
また長年勤務している社員を承継者に選んだ際は、社風や業界のことについても詳しく適任と言えます。
最後のパターンとして、社外から招聘する場合に関しては、第三者目線で会社改革に注力できるので、より会社が発展する可能性があります。
しかし、既存の従業員の反発というデメリットにも注意した人選が必要となるでしょう。
実際に、工務店経営者が事業承継において不安視していることは、承継後の経営状態も去ることながら従業員やクライアントとの関係性を心配する声が多いです。

4-2 後継者人材バンク

2011年から、全国の都道府県に事業引き継ぎ支援センターが設置されたことはご存知でしょうか?
後継者不足で廃業する中小企業を減らすために、創業希望者と後継者不在の企業をマッチングするサービスです。
「起業」と「事業承継」を同時に実現することを目的としています。
国が運営しているので、安心できるというメリットもあげられます。

参考:後継者人材バンク

4-3 M&A

住宅業界は大手参入で競争が激化しており、毎年多くの経営者が廃業せざるを得ない状況となっています。
そんな中で、事業を存続させるひとつの手段としてM&Aによる事業売却(会社譲渡)があります。
M&Aというと、強引な企業買取などネガティブなイメージをする方も多いが、実際には、メリットも非常に多いです。
社会的信用や従業員の雇用を維持したまま、安心してリタイアできると同時に、事業を売却することで「株式譲渡」として対価を得ることができます。
また経営者が交代することで、時代の流れに合わせて会社を変革させることが可能かもしれません。
しかし、デメリットとして、M&Aを行うにあたって仲介業者を雇うことになり、コストがかかることや、必ずしも買い手が見つかるとは限りません。

4.まとめ

(pixabay)

後継者不足で悩む企業の実態を踏まえて、解決策をお伝えしました。
跡継ぎ候補の育成には、5年〜10年かかると言われています。
決まった後継者がいない場合は、外部から探すこととなりますが、スムーズに見つかるか
わかりません。
また後継者選びに失敗すると、それまで順調だった会社が一気に経営不振に陥ることも珍しくありません。
事業承継を円滑に進めのためには、既存社員との関係構築やノウハウを蓄積しておくことが大切です。