2022.08.29
経営ノウハウ

デキる社員の離職を防ぐ!人材マネジメント「管理」との違い

優秀な人材を失いたくないのは当然です。

せっかく育成し戦力となってきた従業員や、特に優秀な人材の離職は企業にとって大きな痛手です。

人事を安定・強化できる「人材マネジメント」として様々なフレームワークが注目されています。

しかし、人事で苦労するという話が変わらず非常に多く耳に入ってくるのではないでしょうか。

デキる社員・従業員の離職防止に繋げて人事を安定させるには、マネジメントの根本的な考え方について改めて見直す必要がありそうです。

マネジメントと管理の違い

「人材マネジメント」と言うと、多くの人が「人材の管理」をイメージするのではないでしょうか。

「マネジメント」は確かに日本語で「管理」と訳される事が多い単語です。

しかし、人材マネジメントの根本を考える際には「マネジメント=管理」という日本語訳のイメージが人材マネジメントを誤った方向に導く可能性があります。

(pixabay)

「規格外を出さないための統制」という誤った認識

日本語の「管理」には統制する意味が含まれています。

しかし、マネジメントの父と呼ばれるドラッカーの著書の翻訳者、上田惇生氏は「自分の翻訳の中で“manage”という言葉を『管理』と訳したことは一度もない。“management”という言葉に対応する適切な言葉は漢語にも大和言葉にもないのです。」と述べているのです。(「マネジメント」は管理することではない|東洋経済オンライン

規格が無いから難しい、人間に関する問題を「どうにかする」

人材マネジメントにおける「マネジメント」に関しては、「どうにか都合をつける、なんとかする」といったニュアンスが本来の意図に近いのではないかと言われています。

人間に関わる問題となれば人それぞれ事情が異なるため、ひとつの解決策が万人に通用する事は無いでしょう。

絶対的な正解が無いが故に解決が難しく、手間や労力もかかる人間に関わる問題をなんとかして、組織の成果に繋げる理論が本来の「人材マネジメント」だと言われています。

人はコストか、財産か?

人材マネジメントにおける最も重要な考え方のひとつが「人を投資対象とすること」です。

労務管理との最も大きな違いは人を断じてコストとは見ない点です。

最近では人材を敢えて「人財」と表現して、人を大切にする経営をアピール・意思表示する企業が多く見られるようになっています。

トヨタ社の人材育成における「モノづくりは人づくり」という考え方も、人をコストではなく財産・資源として見る考え方の代表的な一例と言えるでしょう。

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人の仕事によって企業が成り立つ

時代が急速に激しく変化しても、人材マネジメントの根本である「人は資源」という考え方は時代を越えて通用する理論とされています。

しかし、「人材マネジメント」を考えるときには特定のフレームワークやノウハウだけに注目して人を管理するといった、誤った認識に陥らないよう注意が必要です。

「現代においての、人を資源として大切にする会社とは?人事とは?」と制度や仕組みを考えていくことこそがマネジメントだと言えるでしょう。

実行者は誰か

人材マネジメントの実行者は誰なのでしょうか。

経営者や人事部署も含まれますが、最も重要なのが現場のマネージャーだと言われています。

人材マネジメントを実施したい場合、マネージャーやリーダーが正しい理論を学んでいる必要があります。

高度経済成長時代の「忠誠心」

かつての日本の高度経済成長時代に存在した「従業員から会社に対する忠誠心」は、会社側がそれを求める代わりに終身雇用や年功序列といった会社に尽くすメリットを提供して成立していました。

その後は経済が停滞し、終身雇用神話は崩壊したと言われるようになり、従業員にとって従来の「会社で働くメリット」は失われました。

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優秀な若手を確保するための成果主義

バブル時代の主流だった「働くメリット」がバブル崩壊とともに提供不能となり、若くて優秀な人材を確保したい企業が成果主義を導入するなど、会社で働く事の概念は急速に変化していきました。

危機的な時、「人」を「財」としなくなる

多くの企業は経済が不安定になると、途端にリストラや派遣切りといった「人をコストとして見る考え方」に傾倒してきました。

しかし、人をコストとして管理するやり方に行き詰まり、人を大切にする経営や働くメリットの提供が見直されるという流れを繰り返しているという指摘もあります。

「デキる社員」に選ばれる会社とは

バブル時代の働くメリットが失われているのは、スキルを持ち活躍できる優秀な人材にとっても同じ事です。

能力が高い場合は活躍できる場所が見つかりやすく、兼業や副業が推奨される現代では一つの会社に尽くす意義が無くなりがちだと言えます。

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働く人の「困りごと・悩み」の解決

働く人にとってのメリットは、働く人が抱える困り事や悩みの解決に他なりません。
従業員はお客様ではありませんが、人に対する価値提供という意味では同じ事が言えます。

「いやいや、従業員というのは働く対価として給与をもらっているだろう。対価をもらうのだから会社に貢献するのが当たり前だ。それ以上の対価を求めるなんて…?」という話ではありません。
優秀な人材の取り合いになりかねない現代社会では「その会社で働くメリット」が必要だと考えられています。

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テレワーク

急速に普及した「テレワーク」は、これまで通勤のために家賃が高い都心に住まざるを得ず、満員電車に押しつぶされながら会社へ向かうといった、ある意味成果を出す事そのものと無関係の部分でのストレスから従業員を解放しました。
今まで本も読めない満員電車で浪費していた時間を、自身の勉強や家族サービス、運動や趣味に充てたりと、やる気のある人や優秀な人ほどその恩恵を有意義に活用するでしょう。
心身の健康維持や時間確保の面でプラスになると感じる人にはテレワークを導入している企業で働くメリットは大きく、定着率にも繋がるでしょう。

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人事評価制度

人事評価制度は従業員の定着・離職に直結すると言われています。
以前よりも転職が一般的になり、副業や兼業が推奨される現代においては、企業が人事評価をしっかり見直し運用していく事は必須だと言えます。
正当な評価が受けられない仕組みは、やる気のある人や能力が高い人ほど不満を抱えて離職を決意しやすくなると言われています。

【まとめ】コストではなく「財」として見る

人材マネジメントの根本は、人を財とすることです。
能力のある人、優秀な人、優しい人、頑張る人、様々な「人」がいます。
人が仕事をする以上は当然、会社の成果も一人一人の従業員が確実に成果を出せる事が重要です。


従業員にとっては、自分が「コスト」として扱われるのか「財」として扱われるのかの違いが「この会社で働きたい、頑張りたい、成果を出したい」と思うか、離職を決意するかの分かれ道になり得ます。
会社が人を財として捉え、財として扱われた人が迷い無く成果を出し会社に貢献するという好循環を実現できた企業が、いつの時代でも強く生き残れるのかもしれません。