2022.06.30
経営ノウハウ

【人材育成】年商100億円達成に必要な人財を育てるHPIフレームワーク

”人は、最大の資産である”

ドラッカー

組織課題解決の実施としては「OD(組織開発)」がよく知られていますが、ODとは異なる概念の「HPI」の注目度が高まっています。

ATD(人材開発協会)によって定義された「HPI」の人材フレームワークが、日本企業が抱える経営課題の解決にも力を発揮すると言われています。

ATDによって定義された「HPI」

「HPI」は「Human Performance Improvement(ヒューマン・パフォーマンス・イムプルーヴメント)」の略で、「人のパフォーマンス向上」と直訳されます。

アメリカで長年の研究と実証によって構築された概念であり、人のパフォーマンス改善ができる人材開発方法論です。

「HPI」を定義した「ATD(人材開発協会)」は、米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置いています。約100カ国以上の国々に約40,000人の会員(20,000を越える企業や組織の代表を含む)を持つ訓練・人材開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織です。

※2012年以前は、ASTD(American Society for Training & Development)と呼ばれていました。

人材育成の「中心」はなにか

ATDの考え方のひとつに「人材育成の中心は、人間のパフォーマンスを向上させること。」という概念があります。

(pixabay)

HPIにおける「パフォーマンス」

HPIでは行動するだけの事、いわゆる「タスク行動」のみを指してパフォーマンスとは定義しません。

かと言って「成果・結果」のみでもなく、「タスク行動〜プロセス〜成果までの全体」をパフォーマンスとしています。

組織パフォーマンスの考え方

HPIは、パフォーマンス改善の施策実行が個人に対してのみに偏る事を良しとしていません。

その理由は、組織パフォーマンスの構成についての概念にあります。

組織パフォーマンス=「組織」「チーム」「個人」各能力が合わさって構成されている、と考えます。

つまり、例えどれだけ良質なコンサルティングや研修で個人の能力やスキルを上げたとしても、組織・チームそれぞれの能力を合わせて見ていかない限りパフォーマンスには繋がらず、向上は望めないということです。

(pixabay)

HPIフレームワーク

HPIフレームワークは、大まかに次のような流れです。

  • ビジネス分析(ゴールの定義)
  • パフォーマンス診断
  • あるべきパフォーマンスとのギャップの根本原因を特定
  • 適切な解決策を決定
  • 解決策の実装
  • 評価

ビジネスゴールを定義する

HPIモデルにおいて、まず重要なのが「ビジネスゴールの定義」です。

最終的なゴールは組織の「数字が上がる」ことです。

注意が必要なのは、ゴールは担当者の個人的な希望や、現場からの主観的なニーズではないという点です。

  • ビジネスゴールの例
    • 請求書処理に要する日数を月10日から6日に減らす
    • 1チーム当たりの収益を10%アップする

パフォーマンス診断

次に、期待されるパフォーマンスの状態を「行動」ではなく「成果」に注目して分析します。

成果を出すまでのプロセスの一つ一つにおいて、必要なアウトプットがされているかを確認します。

例えば、適切なシフト表が出されているか、受注確認書が出されているか…といった事です。

出されるべきアウトプットは、チームであればメンバー間で共有しておきます。

この分析方法を用いる事で「必要なアウトプットに繋がる行動が何なのか」というところが明確にしやすくなるでしょう。

問題となる行動から探すのではなく、成果から辿って究明するルートを取ります。

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ギャップの根本原因を分析

ビジネスゴールを定義しパフォーマンスの分析を進めると、本来の求めるパフォーマンスと違う点、つまり現状とのギャップが明確化されます。

ギャップを明確にできたら、そのギャップが生まれている原因を特定します。

ここで間違えやすい点に注意が必要です。それは「ギャップ=原因ではない」という事です。

ギャップを生み出している原因が、改善すべき本質的な原因です。

ギャップを特定して、そのギャップを原因として捉えないように注意しましょう。

原因特定の際には、生じているギャップの原因がパフォーマー本人によるものなのか、プロセス・仕組みによるのか、マネジメントの問題なのか、市場や組織から来ているのか…というように、パフォーマンス構成の一部のみに偏らない見方が重要です。

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適切なソリューション

原因特定をパフォーマンスの構成に基づいて多角的に見るということは、適切なソリューションにも多様なカテゴリーが生まれることになります。
例えば、「ABCシステムを取り入れた〇〇カンパニーは、業績が前年比160%アップしました!」
といった売り文句のような改善策ありきの考え方はしません。ソリューションカテゴリーを踏まえた上で、特定した原因に対して適切な改善策を決定します。

  • ソリューションカテゴリー
    • 知識アップ
    • 健康改善
    • 情報環境の改善
    • 動機づけ
    • 物理的な資源や環境の改善
    • 組織の構造・プロセスや仕組みの改善

ソリューションの実装

適切なソリューションを決定したら、プロジェクトマネジメントや評価の収集を行いながら遂行します。
研修の実施なら、講師選定、会場確保、アナウンス、KPI測定等をスケジュールして進めていくため現場との連携が重要になります。

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評価

評価では、ゴールに対する効果の測定を行います。
そして、その測定と評価を受けて、再度ギャップを解消するために施策を修正します。
評価をする際には「評価自体をゴールにしない事」が重要です。

例えば、「効果測定ワークショップ」といった機会では、参加者が効果測定そのものを目的・ゴールとしてしまうケースがありがちです。
評価はあくまで継続的な改善のための一つのプロセスであるという点を参加者全員がしっかり認識する事が、フレームワークの十分な効果に繋がる評価の第一歩です。

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HPIフレームワークの活用

HPIフレームワークでは、人材育成についての再考を多角的な視点で的確に進める事ができます。
正しく実践するためには「パフォーマンスの定義」や「原因の特定」といった間違いやすい場面に注意が必要です。
スピード感をもって的確な組織変革を望むなら、HPIフレームワークには価値が十分にあると言えるでしょう。