2022.08.11
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ビッグマック指数「日本は貧しくなった」は、本当か?

「日本はビッグマック指数で中国、韓国、タイと多くの国に追い越され、急激に貧しくなった。」と言われています。


このビッグマック指数が「日本経済の実力低下を表す」と言われる一方で、実は「この捉え方には問題点があると」いう意見も聞かれます。

そこで、この記事ではビッグマック指数の仕組みと慎重に捉えるべき問題点について、まとめて解説します。

ビッグマック指数とは

「ビッグマック指数(Big Mac index:BMI)」は、イギリスの経済専門誌『エコノミスト』によって1986年9月に考案された経済指標のひとつです。


購買力平価(PPP)と呼ばれる経済理論に基づいており、2通貨間の購買力を比較するために用いられます。

(pixabay)

計算方法

計算方法としては、まず「ある国のビッグマックの価格(現地通貨ベース)÷ アメリカのビッグマックの価格(USドル)」でレートを算出します。

そして、算出されたレートを実際の外国為替レートと比較して、当該通貨がUSドルに対してどれくらい過大もしくは過小評価されているかを数値化します。

ビッグマック指数のランキングに示される「+20.94」「-2.82」などの数字は、この過大・過小評価を表しています。

【例】

◆ビッグマックの販売価格…日本で400円、米国で6米ドル

◆為替レート…1米ドル=135円

・400(円)÷ 6(米ドル)÷135 ≒ 0.493
・(0.493-1)×100=△50.7

→日本のビッグマック指数(BMI)は△50.7%

上記の例ではビッグマック指数がマイナスとなり、円の評価は過小評価と判断されます。

この場合、日本人がアメリカに行ってビッグマックを購入すると「高い」と感じ、アメリカ人が日本に来てビッグマックを購入すると「安い」と感じます。

(pixabay)

2022年1月時点でのランキング

エコノミストのデータを基にした2022年のビッグマック価格ランキングで、日本は33位となっています。

1位がスイス、カナダ7位、イギリスが11位となり、25位から27位までにタイ、中国、韓国が並びます。

(出典|世界経済のネタ帳)

このビッグマック指数ランキングを受けて、「日本は貧乏になった」「円の価値が下がり過ぎている」「日本は先進国から外れる」と話題になっているのです。

「ビッグマック指数=完璧な結果」ではない

非常にユニークな発想の「ビックマック指数」ですが、完璧な結果として受け止めるものではありません。

ビッグマック指数は、あくまでビッグマックが世界同一の品質で販売され、価値が統一されている前提に基づいて考案されています。

しかし、現実的にはこの前提が成立しないため、あくまで参考として見る必要があるのです。

(pixabay)

経済的要素が価格に含まれる

ビッグマックの価格はMcDonald’s Corp (MDC)によって設定されており、生産コスト、人件費、広告費、賃貸料の他、使用される材料も含まれています。

規格が必ずしも同一ではない

「アメリカのハンバーガーは日本とは比較にならないほどの大きさ。」などといった話を耳にした事がある人は多いのはないでしょうか。

また、文化的背景からビーフの代わりにチキンを使用している国があるなど、一概に世界共通規格の製品と言えない面があります。

国内で価格が異なる

国によっては都心のビックマックの価格が田舎と比較して高く、国内のビックマック価格が統一されていないケースもあります。

番外編(その他、ユニークな経済指標)

意外と知られていない、ビッグマック指数のような少し変わった経済指標を紹介します。

(pixabay)

トール・ラテ指数(スターバックス指数)

トール・ラテ指数は、「スターバックス指数」とも呼ばれ、最近はニュースやコラムで取り上げられる機会も増えています。

ビッグマック指数と同じくエコノミストによるもので、スターバックスのトールサイズのラテを基準にした価格指標です。

KFC指数

アフリカではマクドナルドの店舗数が少なく、ビッグマック指数が有効でないという理由から、アフリカの市場調査会社サガシーリサーチが開発したのが「KFC指数」です。

この指標は、KFCのオリジナルレシピの15ピースバケットの価格に基づいています。

コカコーラ指標

コカコーラ指標は、コーラの消費量と生活の質についての、エコノミストによる分析です。

コカ・コーラの消費量が多い国は、より高い富、健康、政治的自由と相関していることを示しています。

「親しみやすい経済指標」のメリット

経済指標と言うと難しそうに聞こえ、ハードルが高いイメージが持たれやすいものです。

その中で、誰もが知っているビッグマックやラテといった製品を基準にしたユニークな指標は、人々が経済に関心を持つのに役立っています。

まとめ

2通貨間の購買力を比較するために用いられている「ビッグマック指数」のランキングに注目して、その結果を日本経済の危機として取り上げ、刺激的なタイトルの情報が溢れています。

しかし、ビッグマック指数はあくまでビッグマックが世界同一の品質で販売され、価値が統一されている前提に基づいて考案されているものの、実際にはその前提は成立しないと言われています。

そのため、あくまでひとつの経済指標だけに捉われる事無く、多角的に情報を見る力が重要です。