2022.08.22
建築業界動向

【分散型サ高住】高齢者住宅リノベーションで空き家・空室問題を解決!補助金制度も。

「サービス付き高齢者向け住宅」の略である「サ高住」は、自身が自由に暮らせる病院や施設ではない空間を意味します。

今、このサ高住の「分散型」が注目されています。

空き家・空室の問題の解決に繋がるとして、国が直接補助支援を行っています。

サ高住の要件

サ高住は主に介護度が高くない高齢者を対象としていて、登録要件を満たした上で各都道府県の窓口で登録手続きを行い承認を得る必要があります。

要件としては、専門資格を有するスタッフが住宅の敷地又は隣接敷地内の建物に日中常駐する事安否確認と生活相談のサービスを提供する事等が義務付けられています。(常駐しない夜間は、緊急通報システムによる対応が求められます。)

住宅要件ではバリアフリー、各専用部分の設備に水洗便所・洗面設備・台所・収納・浴室を備え、各専用部分の床面積は原則25m2以上といった内容が盛り込まれています。

出典|高齢者向け住まいについて(厚生労働省)

『分散型』サ高住とは

サ高住の中に、「分散型サ高住」と呼ばれるものがあります。

「分散型」の場合、敷地内もしくは隣接する土地にサービスを提供する施設を設置する必要がありません。ただし、サービスを提供する施設からの距離を500m以内とすることが要件となっています。

これは、主に空き家や空室を活用することを目的にサ高住の規制を緩和したものです。

出典|国土交通省

空き家・空室問題の解決を図る

スタッフの常駐が建物から500m以内の別の建物でも良いという点から、空き家や空き室をサ高住として活用する動きが活発になりました。

国土交通省から、分散型サ高住に事業モデルについての具体的な資料も公表されています。

空室の問題を抱えている郊外団地型マンションにも、分散型であればサ高住を導入しやすくなりました。

出典|国土交通省

補助金が受けられる

国土交通省ではサ高住の供給促進のため補助支援を実施しており、サ高住の建設・改修費に対して国が直接補助を行います。

令和4年度の募集期間は令和5年2月28日(火)までで、工事費では新築で10分の1、改修では3分の1までの補助が受けられます。(令和4年7月時点)

出典|サービス付き高齢者向け住宅整備事業ホームページ

補助の対象外になる費用

以下のような費用は、補助対象外になります。

  • 調査費・設計料・申請費など、建物工事費ではない費用
  • 新築の場合の従前建物解体費用
  • 敷地外にかかる工事費(供給処理管の接続工事や取付道路など)
  • 建物に含まれない家具・家電製品・消耗品(収納家具、事務机、個別の暖房器具や照明器具など)

(参考|令和4年度サービス付き高齢者向け住宅整備事業交付申請要領

補助に関しては専用の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局」が設置されています。

サービス付き高齢者向け住宅整備事業専用ホームページ ( 国土交通省ホームページに掲載のリンク)

(pixabay)

分散型サ高住の事例

“分散型サ高住”の実例を見てみましょう。

愛知県名古屋市の「ゆいま〜る大曽根」は、分散型サ高住の実例として有名です。

出典|国土交通省

入居率95%超えの人気物件に

大曽根住宅では、2017年に70戸を改修してサービス付き高齢者向け住宅に転換しました。

改装後に「ゆいま~る大曽根」として居住者を募集したところ、20年6月時点で入居率が95%を超える人気の物件となり話題を呼びました。

今までの暮らしの延長線上にある「分散型」

これまではサ高住と言えば高齢者が集まって生活するのが一般的でした。

しかし、空室をサ高住に改装する場合では高齢者が幅広い年代のコミュニティーの中で生活する事になります。「施設」というイメージが付かない点も含めて、今までの暮らしの延長線上で地域社会に溶け込んで生活したいと願う高齢者にとって大きな魅力になるでしょう。

(pixabay)

郊外型団地のメリットを活かす

団地はバス停が建物の側にあったりと交通の便も考慮されている場合が多く、「ゆいま〜る大曽根」も3駅4路線が利用可能という点を魅力の一つとして打ち出しています。

また、敷地内に緑が多く景観が良かったり、子供が遊ぶ公園が近くにあり活気があったりと高齢者の元気に繋がる環境が多い点も郊外型団地ならではのメリットと言えるでしょう。

(pixabay)

今後の課題

今後の課題の一つとして、介護の重度化や看取りに関する対応が考えられます。

元気なときから在宅介護まで向き合える住宅にできるかどうか、という点は今後一層重要な課題となってくる可能性があります。

「介護付施設へ移らず、住み続けたい」という住民の希望を叶えるには、新たな見守りや医療・介護サービスとの連携も検討していく必要があるでしょう。

(pixabay)

まとめ

小子高齢化社会を迎え、地域社会の在り方なども見直されている現代に対して分散型サ高住が果たしていく役割は大きいと言えます。

今後も、専門サービスや医療体制との連携による「高齢者の住まいの新しい形」が必要とされるでしょう。